余市でおこったこんな話「その265 北海タイムスと文化財」
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昭和31(1956)年7月1日の『余市町区会だより』に、「捨(て)るな一票」のイラスト付きで町民に投票を呼びかける記事が見えます。
投票は北海タイムスが主催する「北海道文化財百選」に、フゴッペ洞窟など郷土の「史蹟」を推して、観光振興の目玉にするために町民みんなが投票しましょうというものでした。
北海タイムス社は明治20(1887)年創刊の北海新聞を母体とし、戦時中には新聞社数社が合併して北海道新聞となり、一時終刊となりましたが、昭和24年10月、それまであった新聞「新北海」が「北海タイムス」と名前を変えるかたちで再開し、平成10(1998)年まで発行を続けました。
同社の余市支局は昭和51年の住宅地図を見るとモイレ山の麓に見えます。
「百選」の事業は昭和31年、全道から一般の投票を募り、推薦なども加えて100件の文化財や名勝を選ぶもので、選ばれた「百選」には記念の石碑が建てられ、北海道や市町村の指定文化財になったものもあります。
同社は「百選」のほか、郷土の歴史や文化財の紹介・保存啓発に熱心で、昭和30年代後半、「開道百年記念事業」として総合博物館の建設が提唱された際には、「道立博物館をつくろう」のキャンペーン運動や記事を通じて建設への世論を盛り上げ、北海道開拓記念館(当時)開館の原動力となりました。
「百選」の主な選定地をいくつか挙げると、富良野市の「北海道中央経緯度観測標」があります。これは「北海道のへそ」の通称で親しまれ、同市の「北海へそ祭り」の由来となり、富良野市の指定文化財になりました。芦別市の黄金水松は推定樹齢1,700年のイチイ(水松)の巨木で北海道指定の天然記念物に、深川市音江の環状列石は国指定史跡となり、中頓別町の鍾乳洞は北海道指定文化財になっています。
「トップに余市町の文化財を」と呼びかけた冒頭の記事の続きは、「百選に郷土の文化財、フゴッペ洞窟、シリパケールン、茂入山城址の三ツをぜひ入選させるよう、町民皆さんの御協力を願います。」とあり、投票の方法は官製はがきにどれかひとつを記入して、締め切りの7月31日までに北海タイムス社宛に送るようお願いされています。
投票の結果、関係者の願いはかない、投票された3つは「百選」に選ばれて、それぞれの場所に記念の石碑が立てられました。背面には「昭和丗一(31)年十月北海タイムス社之建」と刻まれました。
耳慣れないシリパケールン(ケールン:ドイツ語で積み石)という遺跡は、シリパ山にあった国設スキー場の斜面へ向かう途中にある遺跡です。
石が人工的に積み上げられたもので、高さ70cm、直径5m内外の円錐状や楕円状の石積みや、帯状の凹地が90m四方に広がっていました。昭和30~31年に北海道大学の名取武光先生を中心とした調査団によって調査が行われて注目されたので、候補にあがったようです。
また、茂入山城址はモイレ山の南側斜面に石積みが並んでいる一角を指し、江戸時代のはじめ頃のシャクシャインの蜂起の際に、松前藩兵によって築造された「城塞遺跡」と考えられました。発掘調査は行われていないので、詳しいことは不明のままです。
同社が「百選」事業を通して目指した文化財の普及、保存の啓発は各地で続けられました。「百選」に選ばれた余市町の「三選」のひとつ、フゴッペ洞窟は保存のための調査が幾度も続けられ、今でも多くの人が訪れています。
写真 北海道文化財百選の碑(フゴッペ洞窟)
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