その138 郷土の美 

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町内には美しい景色の場所がいくつかあります。明治18(1885)年から2年ほど余市町に電信技手として赴任した幸田露伴は「余市八勝」をのこしました。八勝はその地方の風光明媚な8つの場所のことを言い、鎌倉時代以降に中国から日本へもたらされた考え方で、後には各地に八勝が生まれました。「余市八勝」は、藻寄晴嵐(茂入山の断崖)、増毛朝霞(春の海の向こうに見える増毛連山)、高嶋暮雪(初冬の船中からの小樽高島)、知波歸帆(シリパ岬と夕方の帆船)、大河落鷹(秋の余市川)、琴平夜雨(秋の夜の円山山麓)、永禪寺晩鐘(秋の永全寺の鐘の音)、圓山秋月(秋の円山の月)の八か所です(『若き日の露伴』)。
大川町から余市川河口、沢町方面が選ばれているのは明治時代の市街地の中心が町西部から余市川河口にかけてだったからでしょうか。
余市の美しい景色について語り合う座談会が昭和27(1952)年に催されました。同年9月に発行された月刊郷土誌『よいち』上で「郷土の美を語る座談会」として、その内容が紹介されています。出席者は余市高校の先生で画家でもあった長田先生、画家の中村さんと中川さん、水産試験場職員で写真愛好家だった石井さんの4名でした。
まずは長田先生から、山田町の大きな藤の木と沼のあるTさん宅の庭園が挙げられています。その庭園にはさまざまな木々もそれぞれ特徴ある形をしていて、調和のとれた美しさがある庭園と語られています。石井さんは続いて「山田方面なら鮎場を推すよ、鮎見橋を中心としてね。清冽な流れに立つ小波の逆光線、吊橋、瀬で鮎をつる人、何とも云えないですよ。」
長田先生もそれに賛成して「夏の鮎場は絶景だ、それから春のりんごの花盛りもよい。秋のりんごの実るのもよいけれど、紅葉がほしいね~後略~。」
田川橋の美点は春の景色で、背景の山々がかすみ、山桜が咲いて、リンゴの花々がにおい、油を流したような川面を含めた絶景を指して「水郷余市」と讃えています。
座談会では住民の公徳心についての苦言も見えます。中村さんによると「古い話になるが、われわれが青年の頃、茂入を立派な公園にしようと、青年団、婦人会などで茂入に桜を植えた。~中略~素晴らしかったが皆が大切にしない。帰りにはめいめい折っていく、ひどいやつになると、材木のような太いのを三人位でかついで行く。そんなことで、とうとう折角の苦労も今は跡かたもなくなった。」
座談会では他にも美園の町営墓地下の白い崖、余市橋の夕方の逆光やポプラ、川岸にある棒杭に積もる雪、大川橋から見える魚市場あたりの風景、茂入山からの余市川河口、警察裏山から見える朝日、切通しから見える海、円山公園から望む梅川町、嵐のシリパ岬などが挙げられ、八勝を選ぶのは読者に委ねられて座談会は終わりました。

鮎場とかつての鮎見橋(絵はがき)

写真:鮎場とかつての鮎見橋(絵はがき)

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